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ポージング

上手なポージングのために その一 〜立ち方(脚)〜

ボディビルは筋肉がデカければ勝てる」というわけでは必ずしもありません。
コンテストで勝つには、「うまく見せる」ことも大事なのです。
ポージングはコンテスト前に少し練習すれば良いと思ってはいけません。

目次

はじめに

コンテストに出場するためにはポーズを覚えなければいけません。

バルクたっぷりで、仕上がりがバキバキでも、へんてこなポージングでは、入賞はおろか予選通過も怪しくなります。

ボディビルは筋肉の大きさや形、左右の対称性、バランスなどを競う競技です。

筋肉について競うならば、サイズを図ったり、写真を撮ったりして見比べれば済みそうですが、残念ながら、コンテストでは写真はもとより筋肉のサイズも計りません。

出場者、みんなが一列に並んで、見比べるだけの審査を行います。

見た目だけが審査の対象ですから、どんなにすばらしい筋肉を備えていても、見せ方が良くなければ、実際の実力よりも評価されないかもしれません。

逆に、全然大したことのない筋肉でも、見せ方が良ければ、実力以上に評価される可能性があります。

コンテストで筋肉を大きく見せるには2通りあります。

1つは筋肉を肥大させること(これが本来的にボディビルの目指す所です)

もう1つはポージングで大きく見せることです。大きい筋肉を獲得できるかどうかは素質次第ですが、ポージングは努力次第です。

自分の素質が他の競技者よりも優れていると信じて、ナルシシスティックにボディビルに取り組むか、自分の素質の限界を理解し、リアリスティックにボディビルに取り組むか、あなたはどちらでしょうか。

後者ならば、ポージングの研究と練習をすることが、コンテストで良い成績を得る近道です。

「その一」では、規定ポーズでの立ち方と、その筋肉の使い方について説明したいと思います。

どの筋肉を収縮させるか

普段と同じように立つならば、どこかの筋肉を意識的に収縮させることはありませんが、大腿部と下腿部の筋肉を形よく見せるにはそうはいきません。

規定ポーズでは正面、側面、後面の4面全てを審査員に見せます。各々のポーズでは、見せる面の筋肉を意識的に収縮させる必要があります。

正面のポーズでは大腿部前面の筋肉を収縮させます。つま先を外に向けるとハムストリングスの内側と内転筋群が正面側に露出しますが、収縮させません。

下腿部はすねに隠れていますので大腿部ほど意識を向ける必要はないでしょう。

大腿部前面の筋肉は大腿四頭筋と呼ばれる筋肉です。

大腿直筋、外側広筋、内側広筋、中間広筋(大腿直筋の下にある深層の筋肉なので外見では分かりません)の4つの筋肉から構成されています。

正面のポーズ

正面のポーズでは、大腿直筋を中心に収縮させ、必要に応じて内側、外側広筋を僅かに収縮させます。

良い大腿部は、表面の3つの筋肉が際立ち(デフィニション)、カット(筋肉の筋)があり、シルエットが良いものです。

もっとも多いミスは、渾身の力を込めて、ぎゅっと大腿部を収縮させてポーズをとることです。(画像1の青で囲んだつま先)

カットとシルエットはまずまずとしても、デフィニションが無く、表面的で立体的ではありません。

大腿直筋は、四頭筋の中の唯一の二関節筋で、膝関節と股関節を跨いでいます。

大腿直筋だけを収縮させるには、アイソメトリック収縮で股関節を屈曲させます。

具体的には、立位で、収縮させる方の脚のかかとをやや浮かせ、つま先立ちになります。(画像1の赤で囲んだつま先)次に、地面につま先をつけたまま、ボールでも蹴る感じで、足を振り上げる意識をすると、概ね大腿直筋だけが緊張します。(画像1の黒矢印)

画像1

筋肉のデフィニションは凹凸です。

収縮させることだけが凹凸を作る方法ではありません。

むしろ、収縮と弛緩のバランスによって生み出す方が効果的なの場合があります。

大腿直筋だけを強く収縮させると、外見上、大腿部の真ん中が凹んだように見えます。

真ん中が凹んでいると、その両側は盛り上がって見え、凹凸が出来上がります。

このようにすると、大腿四頭筋全体を収縮させるよりも、はっきりとした凹凸が出来ます。
(画像1の黒で囲んだ部分。つま先を赤で囲んだ方が良い例)

ただ、このままでは内側、外側広筋は弛緩していてぼんやりとしていますから、僅かに緊張させて形を整えてやれば、形の良い大腿部の完成です。

立ち方や、どのように見せたいかによって、各々の筋肉の収縮度合は変わるかもしれませんが、基本的に大腿直筋をメインに収縮させます。

側面のポーズ

側面には左右の二つがありますが、どちらも意識することは変わりません。

側面のポーズでは正面と違って、大腿四頭筋は影を潜め、意識的に収縮が必要な部位は、臀部の筋肉、ふくらはぎの筋肉です。

大腿四頭筋とハムストリングスの側面はデフィニションやカットは乏しいので、丸みがあれば特に意識的な収縮は必要ありません。

臀部の筋肉は主に大殿筋を意識しますが、カットが出れば良いので、単に緊張させるだけで十分です。

ふくらはぎの筋肉は、主に腓腹筋の外側部と、腓骨の外側部の足を外反(小指側の側面を持ち上げる)させる筋肉を意識して収縮させます。
(画像2の赤線)

画像2

足首の微妙な差だが、実際はなかなか難しい。

つま先立ち(底屈)で腓腹筋を収縮させるとき、内側部の収縮感は容易に感じることができると思いますが、外側部となると、意識的に練習しなければ感覚は掴めません。

そして、側面のポーズでは審査員に見せるふくらはぎは外側部になります(サイドトライセップスは内側です)

一生懸命ふくらはぎのトレーニングをしても、いざポーズをとった時、特にサイドチェストでは、外側部のコントロールが出来ないと、見た目にはカットもデフィニションも無いぼんやりとしたふくらはぎに見えてしまいます。(画像2の青線の足)

ふくらはぎのトレーニングでも、ポージングの練習でも、腓腹筋の外側部を意識的にコントロールすることが重要です。

後面のポーズ

臀部、ハムストリングス、ふくらはぎの筋肉を収縮させます。

臀部とふくらはぎは単にぎゅっと収縮させれば問題ありません。

ハムストリングスは注意が必要です。

ハムストリングスは半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋で構成されています。

ハムストリングスのカットとデフィニションは単に収縮を意識しても上手くいきません。

カットやデフィニションはステージのライティングによる陰影によって作られ、そして、そのライトは頭上か注いでいます。

ハムストリングスのカットは縦に入りますのでライトの受け方によって陰影が乏しくなる可能性があります。

ライトを受けて、しっかりとした陰影を作るためには、股関節をやや外旋位にし、ライトを平行に受けないようにします。

また股関節を外旋位にすると、より臀部が引き締まりカットが出やすくなります。(画像3の赤で囲んだ足)

画像3

青(内旋位)赤(外旋位)黒(どちらでもない)
黄で囲んだ部分は、臀部とハムストリングスの収縮具合とライテイングの違いです。
青のように内旋位にすると、臀筋は収縮しませんし、ハムストリングスはライトを正面に受けて陰影が出来ません。
一方、赤は臀筋も収縮し、ハムストリングスはライトを正面に受けませんので陰影が生まれます。

立ち方の種類

フリーポーズにおいては無数にありますので、各々でオリジナルのすばらしい立ち方を考えてもらうとして、私が紹介するのは専ら、審査対象となる規定ポーズの中のフロント・リラックスとフロント・ダブルバイセップスで使用できる立ち方です。

不思議にもこの二つのポーズ以外は立ち方のバリエーションが認められておらず、ちょっと足の位置が違うだけで、審査員から注意を受けます。

理由は分かりませんが、ルールはルールですから、その認められている範囲で策を練るのが、選手の腕の見せ所と言ったところでしょう。

立ち方はだいたい3つに分けられます。仮に、「I型」「A型」「L型」とします。

画像4

I型

ほとんど足を揃えて立つ立ち方です。フロント・ラットスプレッドを取るときの立ち方です。

直線かつ静的な立ち方で、大腿部のカットやデフィニションは出しにくいですが、上体を大きく見せることが出来ます。

脚を揃えて立ちますので、脚のサイズがわかりづらく、上半身と下半身の筋量がアンバランスな人に向いているでしょう。

大腿部のカットを出したい場合は、アブドミナル・アンド・サイのように片足を前方出すと良いでしょう。

A型

これは、仁王立ちのように左右にやや足を開いて立ちます。

重心は偏らずに均等にします。

この立ち方は現在の多くのボディビルダーが採用している立ち方で、バルク型の人向けです。

足を開くので、脚の間に空間ができます。

見栄えするには、それを埋めるくらいの大腿部の筋量と、広げた足に負けないくらいの広さと厚みのある上体の筋量が必要になります。

I型と同様に静的で優美さはありませんが、バルクで圧倒したい場合に適した立ち方と言えるでしょう。

L型

実際はLよりも「ルやノ(の)」に近いと思うのですが、A型のように足を開いて立ちますが、片方の足の体重を掛け、反対を軽くつま先立ちにした立ち方です。

両の膝はそれぞれ、やや曲げます。

フランク・ゼーンの好む立ち方です。

他の立ち方と異なる点は、I型もA型も、どちらの脚も同じ型で対称ですが、L型は両の脚の型が非対称です。

片方の脚に重心を置いていますから、上体も対応して、重心のある方に側屈します。

この立ち方は「コントラポスト」と言われ、視覚芸術の人物を描く際に使われるテクニックです。

ギリシャ時代の彫刻や絵画でよく見られる、体をくねらせているやつです。

見た目は、ただ立っているよりも美しく、躍動的に見えます。

この立ち方の利点は、シンメトリー(対称性)の点で高い評価を得られることです。

フランク・ゼーンは

「どんな選手であれ、完璧に対称的に筋肉を発達させることは出来ない。かならず、わずかにでも偏った筋肉の発達する。対称的に見せたいならば、非対称なポーズを取ることでそう見せることができる」

と言っています。

皮肉なことにI型やA型は対称的に立つことによって、左右の筋の発達の非対称さを露見させてしまうのです。

一方、L型は、左右が同じ型ではありませんから、対称さを比べようにも出来ません、しかし、それ故に対称的に見えます。

正確に比べれば同じではないけれど、パッと見では同じに見える、ということです。

ボディビルの審査では、メジャーをもって測ったり、写真を撮ってコンピューター解析をしたりと、手の込んだことはしませんので、審査員に「シンメトリカル(左右対称)な選手だ」と思わってもらえば、それでいいのです。

ステージの上で

3つの立ち方について説明しましたが、コンテストではどの立ち方を取るべきか、ということが問題です。

どの立ち方も利点がありますので、組み合わせ使うと良いでしょう。

ただ、ほとんどのコンテストビルダーは、バルキーで、シンメトリカルで、バランスが良く、仕上がりも抜群である、はずはありませんから、弱点を隠しやすい、L型を基本に取るといいと思います。

それぞれの立ち方の運用方法は、例えば、ステージ上での立ち位置によって変える、などがいいと思いますが、実用的には

「疲れたら変える」

というのが効果的です。

というのも、全身の筋肉を緊張させ続けるには、審査の時間は長過ぎます。

コンテストの出場経験がある、または見たことがある人は、ポージングがどれだけ疲れるものかを知っていると思います。

トレーニングをしている時のように、息が上がり、汗もかきます。

特に、下半身は、上半身よりも緊張が解けやすく、案外そんな時に、審査員の目が向きます。

審査中は気を抜かないのが当然ですが、そうは思っていても、疲れはどうしようも出来ません。

この問題は、適宜立ち方を変えることで対応します。

ある立ち方が疲れてきたな、と思ったら、別の立ち方に変える。そして、また疲れたら変える。

立ち方を変える動作の際にちょっと休憩ができます。

立ち方を変える度にほんの少しだけ息抜きができるのです。

立ち方を変えるということは、動きを伴います。

すると、否応無しに審査員の注意も向きます。

客観的には、選手のアピールにも見えるのです。

アピールがどれほど審査に貢献するかはわかりませんが、いずれにしても、休憩もできるし、なんとなくアピールもできる。

「立ち方チェンジ」は一石二鳥の策でしょう。

終わりに

ポージングは上半身の変化に気を取られがちですが、初めは下半身のポージングを覚えることが肝心です。

上半身に比べればそのバリエーションは多くはありませんが、おろそかにすれば、ポーズ全体が不格好なものになります。

これからポージングを覚えようとする人は、まずは下半身に重点を置いて練習するといいでしょう。

上半身のポーズよりも覚えることは少ないですから、練習もしやすいと思います。

できれば、コンテスト前だけでなく、日頃から、鏡の前で立ち方の練習をすれば、脚のカットも出やすくなるでしょうし、何より優美で、それでいて練達したボディビルダーに見えることでしょう。

「上手なポージングのために その一 〜立ち方(脚)〜」への1件の返信

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