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旅の記憶

台湾とラーメン・ライス

日本のラーメン・ライスがあるのだから、ラーメン・饅頭もきっと「あり」のはずだ。

暑くなりはじめた初夏、台湾へ行った。

今はL.C.C(ローコストキャリア)が最寄りの空港にも就航し、破格の安さで航空券が手に入るようになった。

ピーチ航空を利用した。

航空券の値段は片道1万円足らずだった。

台湾へ行こうと決めた理由はこの航空券の安さと、ちょっと中国語でも学んでやろうか、と思ったからだ。

台北市街地は、6年前に初めて来たときとずいぶんと変わっている気がした。

何をするにしても面倒がない。

それに、ユースホステルが増えたことで宿賃もかなり低く抑えられた。

日本円で一泊1000〜1500円だ。

前は桃園空港から台北まで、バスで2時間くらい掛かって、大変疲れた記憶があったが、今は直通電車が通っていて、30分ほどで空港から台北市街に移動できる。

海外旅行に付きものの不自由さはほとんど感じられない。

台湾に着いた翌日には語学学校に入学し、授業を受け始めていたくらいだ。

滞在期間は1ヶ月の予定で、平日は授業を受け、暇な時間は街を散策するか、自習をした。

週末は、台北は宿賃が跳ね上がるので、地方へ小旅行をした。

花蓮には2度行った。

日々の宿は、どこか特定の場所に長期間滞在するのは、つまらないと思ったから、面倒だけれど頻繁に変えた。

いろいろな宿があって面白い。

しかし、宿の雰囲気やコンセプトにはそれぞれ個性があるのだが、キッチンに置いてある食器やコップ類が揃って「IKEA」だった。

この数年で台湾のユースホステルが急速に数が増えたのは、もしかすると、ホステル経営のテンプレートみたいなのがあるからなのかもしれない。

語学の勉強と、観光はそれなりにするけれど、台湾で一番に心惹かれるのは「食う」ことだ。

中国語を覚えたいのだって、別に中国や台湾の文化や歴史を知りたいからではない。

いろいろな店や屋台で、ストレスフリーに食事をしたいからだ。

どんな料理なのか、材料は何か、調理法は何か、食い物についてのいろいろな話を聞きたいのだ。

3度の食事はできるだけ、違うものを違う店で摂るようにした。

頻繁に宿を変えているから、難しいことではなかった。

帰国の日が近づいたある日、饅頭(マントウ)の専門店が宿の近くにあるのを知った。

そして、身近にあり過ぎて、台湾に来てから饅頭を食べてないことに気がついた。

饅頭は美味い。

肉まんとかあんまんの生地を折りたたんで蒸しただけのものである。

真っ白で、柔らかな甘い香りと、素朴な味。

ゆっくりと食べると、じんわりと甘みを感じる。

値段も安い。

一個20元も出せば買うことができる。

隣の店は温州大餛飩だった。

チェーン店なのだが、有名な食堂だ。

ふと、ある試みを思いついた。

饅頭とラーメンを一緒に食おう。

温州大餛飩では様々な汁物と麺がある。

組み合わせは自由だ。

中国語で「ラーメン」とは呼ばないが、日本人にはラーメンと呼んで差し支えないものだろう。

饅頭とラーメンの組み合わせの思いついたのは、日本のラーメン・ライスと同じ発想だ。

昼食に、おにぎりとカップラーメンは定番の組み合わせで、私はパンも好きなので、ラーメン&パンもよくやる。

ならば饅頭とラーメンも当然「あり」の組み合わせだろう。

まず、温州大餛飩でラーメンを買って、その足で饅頭屋で饅頭を買った。

二つの袋を下げ、宿に戻り、テーブルに広げる。

さて、まずは、饅頭の前にラーメンの麺を平らげる。

本来的に麺は主役のエネルギー源であるのだが、今回の試みにおいては脇役の座に甘んじてもらう。

スープだけになったラーメンと饅頭が残った。

いよいよ実験のときである。

はじめに饅頭をひとかじり、僅かに噛み締め、素朴な味を少しばかり楽しむ間に、口内の水分は不足気味の状態になる。

そこへ、スープを流しこんだ。

美味である。

ラーメン・ライスと比肩し得る組み合わせだ。

思わず、自分の発想の卓越さ、美味しさに思わずニヤリとしてしまった。

さて、この発見を現地の民にも知らせなければなるまい。

いや、偉大なる中華人のことだ、きっとこの程度の組み合わせは、すでに浸透しているかもしれない。

どちらにせよ、この発見について意見を聞いてみよう。

「エマ、ちょっといいかい?」

中国語の名前は外国人には発音が難しい。

台湾人の中には、外国人向けに英語の名前を別に持つ者がいる。

外国人向けのホステルであれば、従業員はほとんど全て英語の名前を持っている。

「はい、どうしました?」

「食べ物の組み合わせについて、質問したいんだけど」

「どうぞ」

「日本には、ラーメンとご飯を一緒に食べる習慣がある。僕はこの台湾で、饅頭とラーメンを一緒に食べたらどうかと思って、今さっき試してみたんだ。そうしたら、とてもうまかった。台湾人も、饅頭とラーメンの組み合わせはやるかい?」

「そんな組み合わせはしませんよ。饅頭は朝ごはんとして、豆乳と一緒に食べるものです。ちょっとへんですね、饅頭とラーメンの組み合わせは」

「じぁ、ラーメンとご飯は?」

「しませんね。ラーメンはラーメン。ご飯はご飯です」

あまりにきっぱりと否定されたので驚いた。

エマに、近くを通りかかったハウスキーピングの女性にも聞いて見るように頼んだ。

彼女は、苦笑いと共に首を横に振り、通り過ぎていった。

たった2人に聞いただけなので、ラーメンとご飯を食べる習慣が中華文化にないと言い切ることは出来ない。

しかし、彼女らの反応から、一般的でないの確からしい。

中華は他の文化の料理と比べれば、日本食に近く、味の嗜好も似ている。

だから、当然のようにラーメンとご飯の組み合わせはあるものだ、と早合点していた。

考えてみれば、ラーメンと餃子の組み合わせも台湾にはない。

日本人独特の組み合わせだ。

台湾に滞在して、そろそろ一ヶ月になる。

できるだけ色んな物を食ってみようと日々違うもの食ってきたから、もう食で驚くことが少なくなっていたが、思いがけないことで驚いた。

やはり、たった1ヶ月では、まだまだわからないことが多い。

台湾の国土の何倍もある中国ならばどうだろう。

次はきっと中国に行って、たくさん驚くことを発見したい。

そしてまた、台湾に戻ってきて、さらなる驚きを経験したいと思う。

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