目次:ポイント
- エアー・筋トレとは:非荷重のエクササイズ
- プロテインだけで筋肉はつかない:運動生理学よりエクササイズ
- バッティングもスクワットも一緒:技術が筋肉を強くするコツ
- エクササイズは覚えたら終わりではない:エクササイズは熟練する
- 最後に
エアー・筋トレ?なにそれ?
無論、私が考えたのだが、エアーギターなど同様に、単に素振りだけの筋トレを意味している。
筋トレを効率的にするためには、過負荷の原則に沿って、適切な負荷を用いなければいけない。
そして、漸進性の原則に沿って、徐々に負荷を増やしていく必要がある。この二つ原則に基づけば、「エアー・筋トレ」は効果のないトレーニングだろう。
たしかに、科学的には無意味そうであるが、実際には、なかなか効果があるのだ。
様々なスポーツで、素振りが大事な練習なように、筋トレにおいても、素振り(エアー・筋トレ)は効果があるはずだ。
プロテインだけで筋肉はつかない
筋トレが、筋肉を発達させ、筋力を向上させるのは、運動生理学に基づいているからであるが、同時に、エクササイズが、対象の筋肉の構造や、機能に基づいて作られているからでもある。
だが、人々の理解は、運動生理学の方を重要視しているように感じる。
フィットネス産業において、技術指導より、サプリメントや運動器具、運動プログラムを販売するほうが、よっぽど利益になるから、その影響もあるだろう。
私達が、筋トレによって、運動生理学のテキストに載っている「筋肥大」や「筋力向上」の反応を引きこすためには、そのための原因を作る必要がある。
その原因はエクササイズを行うことによって引き起こされるから、そのエクササイズが適切でなければいけない。
適切なエクササイズは、対象の筋肉を正しく運用することにある。
そして、正しく運用するには、筋肉の構造や、関節の仕組みを理解し、実際に動かし、練習してみることが大切だ。
バッティングもスクワットも一緒
そもそも、素振りは、スポーツの練習の場面では、正しいフォームを身に付けるためや、動きの素早さを向上させるために行われる。それは、頭と体のつながりを強化し、イメージした通りに体を動かせるようにすることに他ならない。
筋トレのエクササイズも、野球のスウィングやボクシングのパンチと同じように考えてみてはどうだろうか。
ベンチプレス、スクワット、ラットプルダウンなど、どのエクササイズも独特の動きであって、日常の動きではない点で、他のスポーツと同等に捉えていもいいはずだ。
ならば、各エクササイズの動きそのものに習熟していなければ、思うような結果を得られなく不思議ではない。
例えば、ジムに通い始めて間もない頃は、運動の効果を実感できたが、最近はいまひとつだ、という悩みがあるのもうなずけるだろう。多くの場合、筋トレの初期段階では、どんなエクササイズも新鮮な刺激だから、ただそれだけの理由で、運動効果がある。特別なエクササイズをしなくても、言ってしまえば、何をやっても効果があるのが実際だ。
だがそんなとき、「最初だから効果があったんだよ」とは言わずに、睡眠だとか、栄養、サプリメント、またはエクササイズの組み合わせに問題があるとした、アドバイスを受けることが珍しくない。
他のスポーツで記録が伸びない、強くならない、と言った悩みを相談されたら、大抵のコーチやトレーナーは、フォームや練習のやり方をチェックするはずだ。
いきなり、「たんぱく質は十分に摂れていますか」などと質問することはまずない。(選手にプロテインを売るとマージンが貰える契約をサプリメント会社としていれば可能性はあるが)
さらには、筋トレとなると、自分のフォームや、力の入れ方、など、動作そのものに注意を向けることなく、すぐに荷重をする人を多く見かける。
まれに、明らかに不適切なスクワットのフォームにも関わらず(膝をただ曲げるだけで、重心が前に行き、バランスが崩れるためにしゃがみ込むことが困難なスクワット)始めのセットから、バーベルに20kgプレートをポン、ポンと慣れたようにつけて、スクワットをする人がいる。
当然に、そのようなスクワットでは、筋力も筋肉も発達するわけはないのだが、トレーニングが終わるとプロテインだけはしっかり飲むのである。
エクササイズは覚えたら終わりではない
正しい動きを身に付ければ、その後は練習をしなくても良いかというとそうでもない。
ここが、伸びる人とそうでない人との違いと言ってもいいかも知れない。
筋トレを継続すると、どのようなエクササイズにおいても、始めのうちは感じられなかった感覚を感じるようになる。それは、各筋肉が個別に独立して動いているかのような感じだ。
どのようなメカニズムでそうなるかは知れないが、いわゆる、マッスルコントロールなどと呼ぶと、ピンと来るかも知れない。
また、力の入り具合やバランス、重心といった動作に関する様々な、それでいて、微細な感覚を感じることができるようになる。
すると、外見上は同じでも、本人の感覚では、筋肉に効いているとか、効いていないと分かるようになる。
この感覚に関心を向けるかどうかで、筋肥大と筋力向上の伸びしろが変わってくるといっていいだろ。
こうなると、他スポーツの技術練習と相違無く、よりエクササイズを習熟するために、ジムの中でも外でも、エクササイズの素振り練習は必要だ。
最後に
筋トレは、筋力を上げ、筋肉を大きくする為の科学的な運動処方だから、科学の知識を身に付ければ上手くいくと言うものではない。
むしろ、科学的な知識を十分に備えてなくても、たくさんトレーニングし、試行錯誤している人の方が結果が出たりするものである。
それは、筋トレが、科学の知識やサプリメントではなく、エクササイズをすること自体であるからである。
知識やサプリメントは言わば枝葉、エクササイズをおろそかにしては何の意味も持たない。
エアー・筋トレ(素振り)はエクササイズの質を上げることに繋がる。
正しく、上手いエクササイズができれば、それだけで体は変わってくることだろう。