質問:1セット、1セット潰れるまでやらないと効果ありませんか
答え:潰れなくても効果はありますし、潰れるまでやるべきではありません
目次
「潰れる」という表現は、スクワット、ベンチプレスのように、挙上できないと、バーベルをラックに戻せず、身動きがトレなくなってしまうエクササイズに使われます。
どのエクササイズも、各セットは限界までやりたい。
そう思うからこそ、ベンチプレスやスクワットで、あと一回、できるかわからなくても挑戦してしまう、結果潰れる。
意気込みは素晴らしいですが、実際そこまでして、どれほどの効果が期待できるのでしょうか。
潰れるまでの一回が、筋発達にそれほど貢献するとは思いません。
それに、潰れることに伴う危険性や面倒事の方が、期待できるトレーニング効果に勝ります。
限界まで追い込みたい気持はわかりますが、潰れないトレーニングをするべきです。
潰れるべきでない理由と、潰れなくても限界まで追い込む方法を3つの点で説明したいと思います。
セット法
毎回のトレーニングは、前回の自分を超えていこうとするものですから、限界まで追い込もうとするのが常です。
手を抜いてトレーニングすれば、前回の自分超えられるはずがありません。
毎回のセットで、力の限界にも関わらず
「もう一回、もう一回」
と気力を絞って、結果的に潰れてしまう。
心意気には感心です。
しかし、スクワットや、ベンチプレスでは、潰れてしまうのはちょっと危険です。
セーフティバーがなければ、潰れた後の逃げ場が無い。
また、逃げ場がないから無理にあげようと、歪んだフォームで挙上して、関節や筋に不要な負荷をかけて、怪我をしてしまう可能性があります。
筋肉を発達させるために必要な刺激は、筋繊維の損傷と疲労物質の蓄積です。
「ギリギリの一回」
がなくても刺激を得るための方法はいくらもあります。
一つの例として「セット法」をあげます。
ごく当たり前に取り入れている「○回○セット」ですが、「セット法」という一つのトレーニング方法です。
セット法は、筋発達に必要な負荷で、1度だけ限界まで反復しただけでは不十分なので、休憩を挟んで繰り返そうという方法です。
1セットだけでは、疲労物質と筋繊維の損傷の程度が筋発達を起こすには不十分であることがあります。
複数セットを行なうことで疲労物質を増やし、筋繊維全体の損傷程度を大きくできます。
筋発達に必要なのは、「ギリギリの気合の一回」ではなく、「筋肉の仕事量」です。
つまり、潰れまでやる、やらないは、筋発達にはそれほど影響がないと言えます。
セット中、あと一回できるかどうかわからなければ、その時点でセットを終了し、次のセットにエネルギーを持ち越すといいでしょう。
セット数をこなすにつれて、筋肉は疲労困憊し、トレーニングが終わる頃には「限界まで追い込んだ」感じが得られると思います。
各セットは、「潰れる一歩手前まで」をモットーに、スマートにトレーニングしましょう。
筋トレは自分の肉体を知ること
なぜ、潰れるのでしょうか。
できないとわかっていれば、そこでセットを終われるはずです。
潰れる理由の一つは、自己の限界の状態を知らないからです。
限界を知らないとは、日頃エクササイズを行っているとき、筋肉がどういう感覚をもたらしながら動き疲労するか、疲労しはじめるとどういう変化が起こるのかなどの身体観察を怠っているからだと思います。
自己の筋肉の振る舞いについてよく知っていれば
「今の一回の動きと、この重量感、筋肉の感じなら、あと一回はいけるな」
と残りの力を正確に推し量って、潰れることなくギリギリまで追い込めるでしょう。
「あと一回は半分まで挙げられるだろうけど、完全にはあがらない」
と判断したときは、そのままセットを終了します。
またトレーニングを続けていても、筋肉が大きくなる人、そうでない人がいます。
その差を作る原因の一つにエクササイズ中の自己観察の程度の差ではないかとも思います。
がむしゃらにバーベルを上げ下げして、疲れて帰る人とセットが終わる度に、一人でうなずいたり、首をかしげたり、時にはメモをつけながらトレーニングしている人では、筋肉のつき方が違うことが、ジムに行けば実際に見ることができるでしょう。
もう現役では活躍していませんが、リー・プリーストという、オーストラリアの元プロボデイビルダーがかつて、トレーニングについてこんなふうなことを言っていました。
「私はセット中に潰れることはないね。潰れたって意味がないし、潰れるのは自分を知らないからだろ」
リー・プリーストは、ネット検索をすればどんなボディビルダーかはすぐわかりますが、凄まじい筋量を持っています。
私は彼の体つきから、バーベルを振り回すような、高重量を使ったトレーニングをイメージしていましたが、トレーニングビデオを見ると、むしろその逆で、丁寧に淡々とこなしていたのです。
トレーニングの様子をみて、彼は本当に潰れるようなトレーニングはしないんだな、と納得しました。
潰れるまでやる、というのは、まだ自分を知らない、筋トレについて未熟であるとも言えるでしょう。
日々のトレーニングのなかで、小さな変化や筋肉の感覚に意識向け続けていくことで、自己の肉体を知り、無理をせず、正確に、そして的確に筋肉を追い込み、最大限の筋発達を得られると思います。
マナー
また、潰れる、潰れないは個人の問題に留まりません。
潰れるトレーニングは、ジム内にいる他の会員や、スタッフが気にかけます。
トレーニングしている本人がどう考えているかに関わらず、潰れそうな人、潰れた人がいた場合は補助をして、助けるのがマナーです。
潰れるのが当然だと考えるトレーニーは、常にスタッフや知り合いに頼んで、補助者をつけます。
たまに補助者として付き添うのは構わないのですが、毎度頼まれたりすると、ちょっと迷惑です。
一人でトレーニングでできないのか、と文句の一つも言いたくなります。
ジムは公共の場でもありますので、できるだけ他の会員さんやスタッフに気をかけない方が気持よくトレーニングできます。
そして、本当にアクシデンタルに潰れたときは、誰かが飛んできて助けてくれるでしょう。
「危なかったね」
「どうもすいません。助けてくれてありがとうございます」
なんて会話になって、ジム内での知り合いが増えます。
終わりに
効果的なトレーニングをすることはとても大事なことですが、それ以上にまずは、ジム内のみなさんと仲良く、楽しくトレーニングすることが、良いトレーニングをするのために欠かせないことだと思います。
マナー良くトレーニングするためにも潰れるトレーニングはやらない方がいいでしょう。