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「筋トレはやった分だけ成果が出る」
こんなふうなことがよく言われます。
半分は当たりで半分は間違いだと思います。
筋肉は一朝一夕で大きくも強くもなるものではありません。
ムキムキになるには、それなりの努力と時間必要です。
1ヶ月や2ヶ月では何も変わりません。
凄い体と言われるまでには、2、3年は掛かります。
また、休まず、つらいトレーニングをこなさなければならないのも事実です。
そして、一生懸命トレーニング続けている人は、程度差はありますが、トレーニングをしていない人比べれば、筋肉は大きいし、力もあるでしょう。
だから「筋トレはやった分だけ成果が出る」
というのは、正しいということになります。
反面、筋トレの成果には個人差があります。
この個人差が、「筋トレはやった分だけ成果が出る」
の間違った部分です。
この間違った部分というは「遺伝子の差」に他なりません。
筋肉の発達の限界は遺伝子で決まっている
筋トレの成果を遺伝子のせいにすると、言い訳のように聞えます。
だからといって、果たして、筋肉が発達しないのは、全て「努力が足りない」に帰結していいものでしょうか。
勝ったら、努力をした。
負けたら、努力が足りない。
こんな二元的な評価で、勝敗要因を決めてしまっては、勝者、敗者共に納得しませんでしょうし、両者の努力を知る人は、納得しないでしょう。
それは、何かに挑戦したり、努力してみたり、そして、誰かと勝負したりした場合、その結果は多くの場合、様々な要因が重なり、複雑にからみ合ってその成否や程度の差は決まります。
ですから、筋肉が大きくなる、ならない、というのも、単に「頑張れば」決まるものではないのです。
トレーニングは筋肉を肥大させたり、筋力を向上させるための生理学的なきっかけに過ぎません。
その、きっかけによって、どのくらい筋量、筋力を増やすかはあなたの体、つまりは、遺伝子に委ねられます。
では、一体どのような遺伝子で差があるのでしょうか。
まず、人種の差を考えてみましょう。
白人や黒人の人は日本人より体つきがいいですね。
筋肉も力もある。
ハリウッド映画など、外国映画を見ればアジア人と西洋人の体の大きさや筋量さは一目瞭然です。
だれもこの違いを、努力や、後天的なものだとは言わないでしょう。
次に男性と女性はどうでしょうか。
説明するまでもなく、いくつかの例外を除いては、基本的に男性の方が筋量も筋力もあります。
最後に、同じ個人でも、年齢によっては筋肉がつく時期とそうでない時期があります。
それは二次性徴期、いわゆる思春期です。
特に、男性は、高校生くらいになると、どんどん筋肉がついていきます。
このくらいの時期に、父親を腕相撲で負かした、などの経験があるのではないでしょうか。
また、二次性徴期でなくても、人は成長の過程で、体も筋肉も大きくなります。
子どもと大人の、力の差は歴然です。
人種、性差、年齢、いずれもトレーニングとは無関係に筋量に差がでます。
さらに、筋量差は、同じ人種、性別、年齢であっても、個々人間にも同時に存在すると考えても不思議はないでしょう。
例えば、ボディビルダーのチャンピオンと地方大会でうだつの上がらない選手との差は、なんなのかと考えたときに、もし、努力の量、質ともに同等とあれば、おそらく、遺伝的資質の差が、その差であると考えていいでしょう。
筋肉は誰でも大きくすることは出来ますが、程度の差が、各個人で存在することは知っておく必要があります。
栄養を摂ろう
遺伝的資質が筋量の増加の限界を決めていて、努力をしてもたかが知れていると、諦めるのは尚早です。
限界があるということは、筋肉はその限界までは大きくなるということなのです。
遺伝的資質はどうしたって変えることはできませんから、私達のできることは、その資質を最大限活かすことです。
さて、基本的なことですが、筋肉を大きくするためには材料が必要です。
そして、その材料となるのがご承知の通り、タンパク質にほかなりません。
ただし、タンパク質だけ摂ってもいいというものではありません。
筋肉を大きくするために、その「場」である体に、十分なエネルギーが供給されていなければ筋肉は大きくなることはできません。
体内のエネルギー不足でちょっとした「飢餓」状態にあるようなときに、エネルギーを浪費するようなことはできません。
体にエネルギーの供給が足りないのに、筋肉を作ることは、収入が少なくて生活費が足りないのに、新車を買うようなものです。
体の中には、そのためのローンを組む仕組みはありませんので、残念ながら新しく筋肉をつくることはできません。
エネルギーと同様に、ビタミンやミネラルが不足すると、筋肉を大きくする作業が効率的にいきません。
栄養不足が原因で筋肉が大きくならないということは十分にあります。
もし、あなたが小食ならば、ちょっとは無理をして食べないと、筋肉は大きくならないのかもしれません。
トレーニングの技術が上げよう
筋肉をつけるにはそれなりの技術を身につけなければいけません。
筋トレは、単にやれば良い、ということではないのです。
下手な筋トレでは、筋肉に必要な刺激は与えられません。
技術というのは、多くの訓練を経て身ににつけられるもの、一朝一夕で身につけられるものではありません。
私が見る限り、ジムの中で高い技術、つまりは「この人、トレーニング上手いな」と感じる人は僅かです。
その割には、教えたがりの人が多く見られます(もしかすると、私自身、そのような人間かもしれませんが、そうではないと信じます)
彼らは何を教えているのかをそばで聞き耳を立てると、筋肉を付けるにはいつ、何を食べたらいいか、何とかトレーニング法を試すといい、などという、雑誌やネットで覚えたような知識を披露しているのです。
筋肥大のためのトレーニングは、筋肉へ筋を肥大させるための刺激を与える作業です。
その刺激とは、筋肉の中の白筋、速筋繊維を短時間に疲労困憊にさせることです。
疲労困憊させるには、刺激を与えたい筋肉を負荷を掛け、組織に対し微細な損傷を与え、かつ一定の伸縮の反復によって疲労物質を筋内滞留させなければいけません。
この現象を起こさせるには、負荷を与えたい筋肉が、どういう関節の動きで最大限機能するのか、また、筋肉が収縮する仕組みなど、骨格筋と関節の構造を知っている必要があますし、また負荷を掛ける動きが正しく行えるようにならなければなりません。
正しい動きを行うには、動きを頭で覚えても上手く行きません。
野球ならバットの素振り、ボクシングなら鏡の前でシャドーボクシング。
動きを覚えるための反復練習が当然必要です。
スポーツの練習では当たり前のように行う技術練習も、ことトレーニングにおいてあまり行われないのは不思議です。
ジムに来て、めいいっぱいの負荷をバーベルにセットし、力いっぱい上げ下げして、疲れて帰るだけのトレーニングを続け、「筋肉がつかない」と嘆いてもそれはそうかもしれません。
筋肉がつかないのなら、自分の行っている動作が正しいのかを確認し、少しでも無駄な動きがあれば直し、負荷の掛かる感覚が一定でなければ、それはなぜなのかというようなことを考えながらトレーニングする必要があるでしょう。
最後に
筋肉をつけるには、遺伝的資質、栄養状態、トレーニング技術が大事な要素です。
遺伝的資質はどうしようもありませんが、筋肉がつかないと悩んでいるのならば、残りの二つについて考えてみてはいかがでしょうか。
栄養状態は、たくさん食べればいいだけなので難しいことではありません。
しかし、トレーニングの技術の向上は、時間と努力が必要ですし、個人的には、筋肉をつけるために出来ることで最も重要なことだと考えます。
私はジムで、誰かに「筋肉大きいですね」と言われるよりも「トレーニング上手いですね」と褒められる方が、よっぽど嬉しく思います。